KenGのあしあと(学級通信より)

過去に出してきた学級通信を紹介

第一期 新規採用校4年目  思いを語りあい、思いを出しあう(3) 1994.11.9 No.76

 昨日の授業では、自分がされて嫌だったこと、悲しかったことを出し合った。

 前日に書いてもらっていたので予想はしていたが、かなりたくさん出された。

 それぞれ自分が体験してきたことであるので、説得力がある。

 例えば、

・ 体型のことで悪口を言われたこと

・ ひそひそ話されたこと

・ 仲間はずれにされたこと

・ 無視されたこと

・ 苦手なことをバカにされたこと

・ あだ名・悪口

 これらはおそらく、やった本人は軽い気持ちでやっているのだと思う。

 ところが、やられた本人にとっては、つらく、悲しいことなのである。

 心の傷というのは、目に見えないだけに、相手には伝わりにくい。

 やられてニコニコ笑っていたって、心の中では泣いているのだ。

 わかり合うことは、難しい。

 だからこそ言葉にして、訴えていかねばならない。

 

 この授業の中で、感動的な場面があった。

 Kちゃんが、水泳で、「あの子、5mしか泳げない。」と指さされ、くやしかった、ということを涙を流しながら話したのである。

 それに対しMちゃんは、

「水泳だって、勉強だって、がんばればできるようになる。

 気にしないで、がんばってほしい。」

と、伝えた。

 またNちゃんも、

「私よりも泳げる。

 私にとってはKちゃんはすごい。

 がんばって!」

と、はげました。

 Kちゃんは泣きながら、「ありがとう。」と言った。

 授業の後の感想文でS君は、

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 Kちゃんはすごいと思います。

 スイミングスクールにも行っていないのに、5mも泳げるなんて、すごいです。

 ぼくはスイミングスクールに行っているから泳げるだけで、泳ぎも勉強もかんたんなやつからのつみかさねなんだから、泳ぐれんしゅうをしてがんばりなよ。

 れんしゅうをしたら、100mも200mも泳げるから。

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と、書いていた。

 なんと優しい、なんとすてきなメッセージであるか!

 支え合い、励まし合う仲間がいるということを、子どもたちは知ったはずだ。

 ぼくは、このクラスがまた(かなり)好きになった。

 

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 具体的な授業展開は、記録にも記憶にも残っていないのでわかりません。

 ただ確実なのは、何かしら子どもたちに伝わるものがあり、心をゆさぶる何かがあったということです。

 Kちゃんが自分から語りだし、みんなに思いを伝える。

 勇気がいったと思います。

 きっと誰かが受け止めてくれる。

 そう、信じていたのでしょう。

 そして、2人の子どもが返します。

 「自分の言葉」で話しました。

 だからこそ、Kちゃんを救いました。

 S君の感想も、この通信を通してKちゃんに伝わりました。

 教師のどんな言葉よりも、仲間の一言がうれしいのです。

 こんなすてきな場面、1年の中でそうありません。

 授業をしてよかった、そう思います。