KenGのあしあと(学級通信より)

過去に出してきた学級通信を紹介

第一期 新規採用校4年目 自分を見つめ直すことは、心の成長につながる 1994.12.15 No.86

 朝、教室に行くと様子がおかしい。

 「朝の歌」の歌声が、いつもより小さかった。

 日直で司会をしていたT君の声がボソボソっといった声であり、これは何かあったな、と感じた。

 案の定、ぼくの話が終わったあと、何人もぼくのところにやって来た。

 話を聞くと、朝の会の時にもめごとがあったらしい。

 T君は目に涙をうかべている。

 全員をすわらせた後、まずT君に事情を聞く。

 話によると、T君とMちゃんが日直だったので、朝の会の司会をしていた。

 T君はいつも通り元気な声で進めていたのだが、Kちゃんが、「Mちゃんの声が聞こえないから、もう少し小さな声で言って。」とT君に言った。

 だからT君は、その後小さな声で司会を進めた。

 だが、小さすぎてみんなには聞こえず、「立って下さい。」と言っても、二人しか立ってくれなかった・・・。

 だいたいこういった話である。

 他の子にも何人か話を聞き、Kちゃんにも話を聞いた。

 事実をしっかり確かめた後、T君は一生懸命しようとしていただけであり、KちゃんはMちゃんのことを思って言っただけである、と話した。

 最後にT君、Kちゃんに、それぞれ自分が悪かったところはなかったかをたずねた。

 T君は、Kちゃんをにらんでしまったことが悪かったと言い、Kちゃんは、T君が一生懸命やっているのに、途中で口をはさんでしまったのが悪かった、と言った。

 自分の悪いところを認められて言えることは大変勇気がいるが、それが言えたことはえらい、とほめた。

 T君はさらに、Mちゃんと合わそうとしなかったことも悪かった、と付け足した。

 実にえらい!と、またまたほめた。

 自分を見つめ直すことは、大切なことである。

 それは心の成長に必ずつながる。

 帰りの会、ピッタリ息の合ったT君とMちゃんの司会の姿があった。

 宝物コーナーで、NちゃんがT君とKちゃんを「宝物」として発表していた。

 

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感想(1件)

 今の私ならおそらく、事実を確認した後、子どもたちに

「どう思いますか。」と、たずねます。

 T君やKちゃんを批判する意見が続くかもしれません。

 でも、きっとそうではない意見、

「いやいや、T君は元気いっぱい言って、楽しく進めていたんだよ。」

「Kちゃんは、Mちゃんのことを思って言っただけだよ。」

といった、プラスの面を捉えた意見も出るはずです。

 そこを取り上げ、子どもたちに返していく。

 つまり、担任である私の考え、というのではなく「子どもの言葉であたたかくまとめていく」ようにすると思います。

 Mちゃんは実は、場面緘黙の子どもです。

 全く話さないのではなく、友だち同士であったり、役割が決まった場面であったりすると、小さいですが、声を出します。

 子どもたちはそのことは、充分わかっています。

 優しくかかわっていました。

 だからこそ、KちゃんはT君につい言ってしまったのでしょう。

 今思い出しても、すてきな子どもたちでした。