昨年の4月5日、子どもたちと初めて出会う前日、ぼくは子どもたちの名前を必死で覚え、そして一人ひとりに手紙を書いていました。
手紙を書きながらぼくは、子どもたちとの出会いに胸ときめかせ、その日の夜はなかなか眠れなかったのを思い出します。
翌日、4月6日、子どもたちとの出会いの日です。
ぼくはその時、23人の子どもたちを両手いっぱい広げて受け止め、子どもたちもまた、笑顔で受け入れてくれました。
この日から、夢の飛行船の旅、「夢飛行」が始まったのです。
時はめぐり、早いもので3年2組として過ごせる日は今日が最後であり、子どもたちと別れる日がとうとうやってきました。
できるなら、今日という日は来てほしくなかった。
でも、春3月は別れの季節であり、4月は新しい出会いが待つ季節なのです。
昨日、お別れ会をかねたカラオケ大会をし、教室の掲示物をすべてはずしました。
子どもたちが帰ったあと、一人で教室の片付けをしながら、ガランとした教室を見回しました。
子どもたちのいない教室はとても寂しく、静かです。
思い起こせば、いろいろな事がありました。
それらをみんなで話し合って乗り越えていくことにより、クラスはいつの間にか「群れ」から「集団」に変わっていました。
日々の出来事、どんなささいな事であっても、一つひとつ、子どもたちを、あるいはクラスを高めるための、大切なステップであったような気がします。
子どもたちに、たくさんのことを語ってきました。
よく叱ったし、全面対決をして授業をしなかった事もありました。
ぼくは特に、「いじめ」には敏感であり、厳しい姿勢で臨みました。
子どもたちにはこれからも、
”人の心の痛みを感じとれる人に、
自分の気持ちを自分の言葉ではっきりと言える人に”
なってほしいと思います。
どうかお願いです。
”友の喜びを自分の喜びとして感じ、友の悲しみを自分の悲しみとして感じ、友を苦し
めるもの、傷つけるものには怒りを持ち、友が悩んでいる時には勇気づけてあげられ
る”
そんな、温かくて、たくましい強い心を持つ人になってください。
そして、
”あたりまえのことがあたりまえにできる”
そんな人になってください。
君たちとすごしたこの1年、決して忘れません。
こんな力のない先生でも、毎日すてきな笑顔を見せてくれて、「先生、先生。」「先生、あのね。」って話しかけてくれたその優しさ、明るさ、忘れません。
すてきな子どもたちを、ありがとうございました。
こんなに1年が速く感じられた事はありませんでした。
それほど充実した、楽しい1年であったのです。
別れは新しい出会いの始まりです。
新しい出会いが、すてきな出会いであることを祈ります。
本日をもちまして、1994年度T小学校3年2組を解散いたします。
ぼくの両手いっぱいにかかえた、大切な大切な子どもたちを、みなさまの温かい大きな手のひらに、お返しいたします。
1年間、ありがとうございました。
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前回も書きましたが、自分の異動が決まっていたので、よけいに別れが切なく、感傷的になっていました。
離任式は、当時は新しい年度が始まってから行われていました。
ですので、この時点で子どもたちは、私が異動することを知りませんでした。
4月1日の新聞で発表される記事を見て、知ることになります。
新年度が始まってすぐだったと思います。
離任式がありました。
子どもたちの前に立つのがとっても照れくさく、そして胸が詰まりそうな、何とも言えない複雑な気持ちでした。
4年生になった子どもたちを見つめると、泣いている子どもがいます。
どんなあいさつを自分がしたのか、忘れてしまいましたが、子どもたちの何とも言えない表情は、今でも忘れられません。
この4年、すごく鍛えられ、教師としての自分の基礎を作ってくれました。
新たな思いを胸に、W市のN小学校に異動です。
「第一期 新規採用校4年目」をこれで終了します。
ありがとうございました。
ものを書くことが好きだったので、この「ブログを書く」ことで何だか作家になったような、そんな気分になれました。
引き続き、「第二期、三期・・・」と続けていく予定です。
今後もよろしくお願い致します。